Podcastのやっていきかた
9mとsoramugiから、 やっていきエフエム という名前でPodcastをやりませんかという話を承け、Podcastをやることになった。既にサイトが公開されていて、https://yatteiki.fm からアクセスできる。昨日できたばかりで準備中なところが幾つかあるが、サイトを開いて音を聴けるという点では最低限の体験は保証されている。
- 10月25日にSlackチームを立ち上げ
- 10月28日に練習でSkypeで通話
- 10月29日に1回目を収録
- 10月30日に公開用のサイトを作成
という流れで、発足から企画、収録、公開まで進み、この順調さには当の我々ですら驚かされた。
個人的には、雑談レベルの会話が淡々と展開されていくような、例えばカンファレンスの懇親会での会話を隣で聴いているような、あるいは飯屋での雑談を隣で聴いているような、更に言えばマックで隣の女子高生のガールズトークを聴いているような、そういったゆるくて雑な個人の雑談レベルのPodcastがもっと増えていってほしいと思っている。話し手は、決して有名人でなくとも構わない。
そこで、間口を広げるためにも、ここまでの制作時の知見を残しておく。この道のプロではないから、最高の方法を紹介することは難しくとも、我々のやり方を紹介することぐらいは許されるだろう。個々のトピックに分けて紹介するので、好きなところをかいつまんで読んでほしい。
マイク
第1回の収録で自分が使ったのは Blue Micro Yeti で、9mが使ったのは MK01BL 、soramugiが使ったのはELECOM製の安いヘッドセット。
- Blue Micro Yeti Amazonで現在18,000円
- MK01BL と スタンド と アダプタ Amazonで現在3,680円 + 1,680円 + 1,109円
iPhone付属のイヤホンマイクは意外と良い性能なので、最初はこれを使っておけば問題ない。それなりのマイクが欲しいが今のところPodcastぐらいにしか使わないというのであれば、MK01BLはセール中で価格も比較的安くおすすめだ。しかしMacbookでの接続時には電力供給が足りず、USB変換アダプタを挟む必要があるかもしれない。自分の場合は、以下の基準でYetiを選んだ。
- 室内で持ち運びできる (冬はこたつと作業机で交代浴をしている)
- ハードウェアスイッチでのミュートが簡単 (会議中に意外とよく使う)
- 複数人での会話も取り込める (たまに家で友達とゲーム配信をやる)
Blue Micro Yetiは、金を出せば相応の物が得られるという点では最高のマイクの1つだ。繋げば動くし、とにかく問題が少ない。それに、金属製の良さ気なマイクがデスクに置かれている様はなんというかこう、気分を盛り上げてくれるものがある。
連絡
1人のオーガナイザのPodcastに毎回ゲストが参加するという形式ではなく、数人で雑にやるという雰囲気だったので、 Slack でやり取りしている。soramugiが呼びかけてチームをつくってくれたのだが、やりたいよねという話から一歩を踏み出すまでの腰は重く、soramugiのこの初動は非常に大きな功績を上げたと言える。皆さん、これが主体性というやつです。
通話
複数人で通話できることと音質を優先して、 Skype を利用している。音声テストが付いていて、マイクの設定に慣れていない参加者がいる場合は地味に便利だったりする。Skypeは以前にRebuildというPodcastに参加させてもらったときにも利用したので、その実績からも信頼している。
録音
ここまで触れていなかったが、録音用のPCとして Mac を利用している。第1回の収録時はmacOSに最初からインストールされている QuickTime Player で録音した。多少の不便さはあるものの、シンプルで取っ付きやすいUIだ。ちなみに念のため3人全員でそれぞれ録音して喋ってみたところ、自分以外の2人は録音に失敗していた。原因は、音が小さすぎる、自分の声しか入っていないなど。これ自体はQuickTime Playerのせいではないが、結果として失敗しやすいUIなのかもしれない。次回は同じくmacOSに最初から入っているGarageBandも試してみようと思っている。
Skypeから聴こえてくる通話相手の声を自分のヘッドホンと録音用アプリへ、マイクから入力した自分の声をSkypeと録音用アプリへ流すために、 Soundflower と LadioCast を利用している。SoundflowerはmacOS用の仮想オーディオデバイス、LadioCastはソフトウェアミキサー。いい時代なのでどちらも無料で入手できる。
音の流れはこういう感じ。
LadioCastとサウンドの環境設定はこういう感じ。設定で困ったときは、ググれば歌い手やYouTuber向けの記事が沢山出てくるはずだ。
編集
QuickTime Playerで録音した音源はm4a形式で保存できるので、mp3に変換してWebブラウザでアクセスできる場所に置いておくと皆が聴けるようになる。ここで説明する作業はやらなくても良いが、ここで一手間加えて音源を編集しておくと、より聴きやすいものになる。具体的には、不要なノイズを消したり、大きすぎたり小さすぎたりする音量を調整したりという作業になるが、まあ実際やってから振り返ってみるとボタンを何度か押しただけだ。編集作業には Audacity と Levelator を、mp3への変換には Lame を利用している。
流れとしてはこういう感じ。
- AudacityでCompressorエフェクトを利用して個人間の音量の差異を調整
- AudacityでNoise Reductionエフェクトを利用してノイズを除去
- Levelatorで全体的な音量を自動調整
- Lameでmp3に変換
Levelatorの変換の様子。
Lameの変換の様子。
試聴の様子。
公開
Podcastを公開するには、少なくとも音源とRSSフィードにHTTPでアクセスできるようにする必要がある。
いろいろな選択肢があるが、最終的には GitHub Pages を選択した。
GitHub Pagesは今世紀最高の静的ファイルホスティングプラットフォームだ。拡張子が .mp3
のファイルを置けば audio/mp3
形式で配信してくれるし、拡張子が .xml
のファイルを置けば application/xml
形式で配信してくれる。つまり、Podcastが簡単に実現できる。GitHub PagesはJekyllというツールを癒着を疑うレベルで優遇しているので、郷に従ってJekyllの使い方を覚えて使ってみている。リポジトリは公開してあるので、ソースコードやPull Requestを観察すれば実現方法がより深く理解できるはず。
iTunes Storeへの登録
iTunes StoreにRSSフィードのURLを登録すれば、数日後にはiTunes Storeに登録される。このページへの導線はかなり奥深いところにあり、iTunes StoreのPodcastのページ (フッターに導線がある) から、Podcastを登録する (サイドバーに導線がある) というリンクをクリックするとアクセスできる。現在は登録申請済みで、待ちの状態。
まとめ
Podcastが普及させた音声配信の文化は讃えられるべきものだ。個人で高いモチベーションをもってPodcastを配信している人達の熱意も素晴らしいものであるし、今回Podcastをやるにあたっても、人々によってまとめられたブログ記事や発表資料が非常に参考になった。この記事を書いている際にも音源の編集方法についてアドバイスをくれたmiyagawaさんには、特に感謝している。そういった人々への敬意を込めて、今回この記事をまとめるに至った。
幾つかのツールを紹介したが、そのほとんどは無償で利用できるものばかりだ。ここまで簡単にPodcastを配信できる環境が整っていれば、配信者が増えるかどうかは、あとは文化の問題になっていくだろうと思う。もし雑談を配信する文化に流行りが訪れれば、雨後の筍のように雑なPodcastがどんどん増えていくだろう。Podcastをやること自体についてのブランド力が落ちていくかもしれないが、それは構わないと考えている。Podcastをやっているという事実に対してではなく、その内容にこそブランド性が見出されるべきだ。
個人の雑談レベルの会話が配信される未来の先に、どんな新たな文化が待ち構えているのかを予想するのは難しい。自分の考えでは、通話・録音・配信の機能が一括りになった高品質なモバイルアプリが流行し、指先1つで通話を配信できる環境が整い、スマートフォンの本来の電話としての在り方が見直される時代が来るだろう。あるいは、人のすべての発話が記録され、配信されるべきシーンが機械によってサジェストされる時代が来るかもしれない。そのような環境が実現されるためには、アプリ開発の技術だけでなく、携帯端末、通信、ストレージ、音声認識、暗号化などさまざまな技術の発展を辛抱強く待つ必要があるが、それまでの長い間、人々の飽きさせぬPodcastが我々を楽しませ続けてくれるだろう。