「Kyoto.なんか

Kyoto.なんか

「Kyoto.なんか」というのは「プログラミングに関する発表をしあってみんなでわいわいする勉強会」で、今回含めて過去2回行われているイベントです。

amakan

amakan というのは、自分が開発している、新刊・蔵書管理をサポートするためのWebサービスです。https://amakan.net/ からアクセスできます。今回は、amakanの中で使われているシリーズ判定の仕組みについて話しました。

シリーズ判定界隈

コミックやライトノベルに対してシリーズ判定をやっている事例というのは少なく、Amazonや楽天、国立国会図書館、Google ブックスなどを調べてみた限りでは利用できそうなデータはありませんでした。調べている中で唯一、1kkan.com というサービスがこれに近いことをやっているのを発見したんですが、正規化などで取り組んでいるという情報ぐらいしか得られませんでした。

このような話をしていたところ、発表中に会場から「あ、それつくってるの私です」という話が出ました。日本のシリーズ判定界隈のメッカは、この瞬間、間違いなく京都にあると言えるでしょう。やあやあ我こそはシリーズ判定者なりという方が他にもおられましたら、是非名乗りを上げてください。

シリーズとは何か

シリーズ判定の難しさの1つに、シリーズという概念の曖昧さが挙げられます。例えば、18巻まで刊行されている著名なライトノベルをとってみても、アインクラッド編、フェアリィ・ダンス編、ファントム・バレット編のような分類や、第1章、第1章 外伝集、第2章 上巻、第2章 下巻、外伝、第4章 1幕、第4章 7幕 (第4章新章 1幕)、第1・2層、第3層、など別の分類も存在します。補足しておきますが、これは ソードアート・オンライン という作品の例です。

「この一連の作品は1つのシリーズものである」ということを正確に決められるのは、恐らくそれを制作した作者や出版社ぐらいしか存在しないはずですが、特にそういう分類を主張する文化は存在しないので、見方によって様々なシリーズの捉え方があるような状態です。しかしこのままでは非常に都合が悪いので、amakan ではシリーズとして成立する集合の条件を次のように定めました。シリーズ名という条件により、単純に集合に分類するだけでは上手くいかず、問題が難しくなっています。

  • シリーズ名を付けられる
  • 同じような名前を持っている
  • 同じ作者の作品である (作者が複数人いる場合は全員一致すべき)
  • 同じカテゴリの作品である (例えばラノベとコミックは別ということです)
  • 2冊以上の本が含まれる

シリーズ判定方法

シリーズ判定方法については、発表資料上で説明している通りです。amakan で利用している実装は https://github.com/amakan/amakanize に置いてあります。

今回説明したようにパインプライン状にフィルタを適用していく処理というのは、以前に自分が開発したMarkdownプロセッサに着想を得ています。これは Markdownを拡張して独自記法をつくる - Qiita という記事に内容をまとめており、ソースコードは https://github.com/increments/qiita-markdown に置いてあります。複数の独立した処理を順々に適用していくような内容で、かつそれぞれに適切な順序が存在するという場合、初期段階ではこういう設計にするとそこそこ具合が良くなると思います。

今後のシリーズ判定戦略について

とりあえずElasticsearchを導入してシリーズ判定に利用してみようと思っています。いま現在はMySQLを利用しており、抽出したシリーズ名からタイトルで検索して候補を取得した後、更に作者が一致するものに絞り込むということをやっています。しかし、正規化しきれない表記揺れがタイトル・著者ともに数多く存在し、また著者についてはそもそも巻によって漏れがあることも少なくありません。

そこで、完全一致に頼ることは諦め、一致度によってスコアリングし、検索結果から特定の閾値以上のスコアの本を同じシリーズとして許可する、という戦略を試してみようとしています。この方法を採用することで、例え作者の内の1人が抜けていたり、表記揺れにより別の作者と判定されたり、10巻からいきなりBLACK LAGOONがブラック・ラグーン表記に変わるようなことがあったとしても、スコアリング計算制度と閾値設定次第で上手く判定できるんじゃないかというねらいです。しかし誤判定が増える可能性も上がるので、安易な導入は危ぶまれます。

集合への分類という点・教師データが用意しやすいという点から機械学習の導入も検討していますが、判定ルールの説明が難しくなること、推薦アルゴリズムなどと違い誤判定のリスクが大きいことから、まずは前述したスコアリング時の係数や閾値などの比較的簡単な部分から導入できたらと考えています。

今後のamakanについて

今週まではコミックとライトノベルしか扱っていませんでしたが、つい先日から amazon.co.jp で購入できるほとんどの和書や洋書を扱えるようになりました。現在はコミック・ライトノベル以外の本の解禁に対応して、シリーズ判定戦略やサイト構造を変更している最中です。また、いまはChrome拡張を使えばAmazonの注文履歴や別サービスの読書履歴から一括登録できるようになっていますが、これをFirefoxなど他のブラウザに対応しようとしているのと、iPhoneアプリやAndroidアプリをつくろうとしているところです。

今後も使いやすさを重視して改善を続けていこうと思っているので、ぜひご利用ください。https://amakan.net/